ヨーキーもも

超低脂肪食での治療に関する2文献

「超低脂肪食で治療した犬慢性腸症18例の回顧的検討」


犬の慢性腸症(CE)は、対症療法に反応しない慢性の消化器症状を呈し、消化管粘膜に原因不明の炎症が認められる疾患群を指す。CEの治療法には、主に食事療法、抗菌薬療法、ステロイド療法があげられ、特に食事療法は副作用のない治療法として推奨されている。超低脂肪食(ULFD)は、米、じゃがいも、ささみを用いた手づくり療法食であり、近年、リンパ管拡張症の有効な食事療法として報告された。ULFDは食事療法の第一選択として使用が期待される一方で、CEに対する治療反応性や適応症例に関する情報は乏しい。そこで本研究では、ULFDで治療したCE症例について、治療反応率と治療効果に関連する因子を明らかにすることを目的に回顧的調査を行った。
2012年1月~2015年5月までに北海道大学付属動物病院に来院し、臨床的にCEを疑い、初診時からULFDを用いて治療した犬慢性腸症臨床活動性指標(CCECAI)≧4の症例を対象とした。初診時、治療開始後1週間、2週間、4週間の診療記録を調査した。治療開始後にCCECAI≦3になった症例を有効と定義し、治療反応率、反応に要した期間、有害事項の有無を記録した。また治療有効群と無効群間で初診時に測定した各項目(年齢、CCECAI,発症後から初診時までの期間、Alb、Tcho、Ca、WBC、CRP)について群間比較を行った。
対象として18例が該当し、そのうち11症例(61%)がULFDによる治療に反応を示した。11症例のうち6症例はCCECAIが0まで改善した。反応に要した期間は中央値15日(範囲8~22日)であり、治療期間中は明らかな有害事象は認められなかった。また治療有効群では、CCECAI(中央値6、範囲4~11)とAlb(中央値1.4g/dl、範囲1.0~2.1g/dl)が治療無効群(CCECAI:中央値10、範囲5~18、Alb:中央値2.1g/dl、範囲1.1~2.4g/dl)と比較して有意に低値を示した。
本研究の結果から、ULFDがCE症例に対して有効な治療となる可能性が示された。特に重度の低Alb血症を示し、臨床症状が軽度な症例ほどULFDに反応を示す傾向にあり、ULFD開始前のCCECAI、Albの値が治療反応性の指標となる可能性が示唆された。


以上、北海道獣医師会雑誌(2015年 北大獣医内科学 北大付属病院発表)より引用


「超低脂肪食(ultra low fat diet)による食事療法を行った腸リンパ管拡張症の9例」


腸リンパ管拡張症(IL)は腸粘膜、粘膜下組織,、腸間膜のリンパ管の異常な拡張を呈した病態であり、犬の蛋白喪失性腸症(PLE)の主な原因のひとつである。ILに対する治療は、小腸からの血漿タンパクの喪失を減らし、腸管またはリンパ管に関連した炎症を改善し、漏出や浮腫を抑えることである。食事中の長鎖脂肪酸はリンパ還流を増やし、リンパ管圧を上昇させるため、脂肪を制限した食事が推奨されている。また、ILがIBDに併発する場合などでは、ステロイド剤の投与が一般的に行われている。今回我々は、抗炎症療法や市販の低脂肪処方食でコントロールが困難であった症例に対し、長鎖脂肪酸を制限した超低脂肪食として、ササミ、ポテト、白米等の給餌を行ったところ、良好な反応を得られた症例が多かったことからその概要を報告する。
2010年6月~2011年10月までに日本大学動物病院へ低アルブミン血症を主訴に来院し、内視鏡検査により病理組織学的にリンパ管拡張を認め、PLEと診断した症例のうち、ステロイド剤に反応の乏しい5例、ステロイド剤の減量により再発した3例および病理検査にて炎症像が乏しい1例の計9例に対して、超低脂肪食による食事療法を行った。超低脂肪食として、ササミ1容に対してポテト2容あるいは白米2容となるように給餌した。
 超低脂肪食開始後にALB値が正常値へ改善したのは9例中8例であった。病理結果にて炎症像が貧しかった1例は、ステロイドを使用せずに4ヶ月間良好に維持したが再発し、ステロイドの使用が必要となった。効果の得られた8例全てにおいてステロイドの減量が可能であり、1例において休薬に成功した。超低脂肪食により改善しなかった1例は、ステロイド継続中に再発し、超低脂肪食を開始するも重度の食欲低下、水溶性下痢を呈し、死亡した。
ILに対する治療は脂肪制限食が基本となるが、その便利さから一般的に低脂肪処方食が用いられてきた。しかし、ステロイドへの反応が乏しかったり、再発を繰り返すようなコントロールの難しい症例に対して、食事を超低脂肪食へ変更することで良好な反応が得られ、ステロイドの減量、休薬が可能となったことから、ILに対して超低脂肪食は非常に有用であると考えられた。


以上、日本獣医師会獣医学術会年次大会講演要旨集(2012年 日本大学動物病院 日本大学総合臨床獣医学発表)より引用



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  1. 2016/04/15(金) 21:05:25|
  2. IBDやリンパ管拡張症の文献・情報など
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